「してはいけない」が、かえって苦しくなることがある
誰かの話を聴こうとするとき、頭の中でこんな声が響くことってありませんか?
「あ、今アドバイスしたくなっちゃった、ダメダメ」
「今の言い方、評価っぽかったかも…」
傾聴を真剣に学ぼうとすればするほど、こうした「〜してはいけない」という禁止事項に縛られて、苦しくなってしまうことがあるんですよね。
実はこれ、多くの方が一度は通る「共通の壁」なんです。
もちろん、相手が安心して話せる場を作るためには、大切なルールです。
けれど、これらを意識しすぎると、頭の中が「自分へのダメ出し(自己監視)」でいっぱいになってしまいます。
意識のスポットライトが相手ではなく、「上手く聴けていない自分」に向いてしまうんですね。
すると緊張してしまい、話を聴くどころではなくなってしまいます。
そこで今日は、私自身が大切だと思っている視点を3つご紹介したいと思います。
傾聴を少し楽にする、3つの視点
1. 「禁止」から「すること」へ置き換える
脳は「〜するな」と言われると、かえってそれを意識してしまう性質があります。
なので、「してはいけないこと」ではなく、「相手に向ける関心」に意識を置き換えてみます。
「アドバイスしてはいけない」
➡️ 「この人は今、どんな気持ちで話しているのかな?」
「評価してはいけない」
➡️ 「この人はどんな世界を生きているんだろう?」
2. 「うまく聴く(Doing)」から「ただ、そこにいる(Being)」へ
「うまく聴かなきゃ」という意識が強くなると、聴くことが作業になります。
まずは、
「私は今、この人の隣に座って、一緒に同じ景色を眺めている」
そんな感覚を大切にしてみてください。
3. 途中で気づければ大丈夫
もちろん、私たちも人間ですから、ついアドバイスしたくなることもあります。
自分の話をしてしまうこともあります。
でも、そのことに気づいたなら、そこから相手に戻ればいい。
「ごめんなさい、つい自分の話をしちゃいましたね。さっきの続きをもう少し聴かせてもらえますか?」
そんなふうに軌道修正できれば十分です。
むしろ、その飾らない誠実さが信頼関係を深めることもあります。
ガードレールを見るより、前方の景色を見る
傾聴って、車の運転と似ている気がするんですよね。
大切なのは、「ガードレール」を見ることではなく、前方の景色を見ることです。
ガードレールは道路から外れないために必要ですが、運転中ずっとガードレールばかり見ていたら、かえって走りにくくなってしまいます。
傾聴も同じかもしれません。
「してはいけないこと」を知ることは大切です。
けれど、それ以上に「相手を理解しようとすること」に意識を向ける。
「この人のことをもっと知りたい」を出発点にしてみる。
その小さな切り替えが、あなたの傾聴を少し楽にしてくれるかもしれません。
ここから少し深掘り
ロジャーズは、人には本来、自らの人生を前へ進めていこうとする力があると考えました。
だから傾聴は、相手を変えるための技法ではありません。
聴き手が助言を与えたり、正しい方向へ導いたりすることよりも、その人自身が自分の体験に触れ、自分なりの意味を見いだしていくことを大切にします。
そう考えると、
「アドバイスしてはいけない」
「励ましてはいけない」
という教えの本質も少し違って見えてきます。
問題なのはアドバイスや励ましそのものではなく、聴き手が、
「自分が何とかしなければ」
「自分が答えを与えなければ」
という立場に立ってしまうことです。
だから傾聴では、何を言うかよりも、どこに意識を向けているかが大切になります。
相手を変えようとして聴くのか。
それとも、相手が自分自身と出会っていくプロセスを信頼して聴くのか。
そして私は、その信頼こそが傾聴の土台なのではないかと思っています。





