あなたは、「傾聴」という言葉を聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか?
もしかしたら、「なんだか難しそう」と感じたり、「ちゃんとできているかな」と少し不安になったりすること、ありませんか?
人の話を本当に大切に聴きたいと思っている人ほど、「どうやったらちゃんと聴けるんだろう?」と悩みますよね。
実は、傾聴は特別なテクニックではなく、相手のことを「わかりたい」と思う気持ちが、何よりも大切です。
その気持ちがあれば、いつもの会話の中でほんの少し視点を変えるだけで、誰でもやさしく深い聴き方ができるようになります。
今回はその視点について、お話ししてみたいと思います。
「話の内容」より「気持ち」に耳を傾けてみよう
普段、私たちは誰かと話すとき、自然と「何を話しているか」に注目しがちですよね。
例えば、友達が「昨日、映画を見たんだ」と言えば、「どんな映画だったの?」とか「どこで見たの?」と返すことが多いと思います。
これは、話の内容――つまり「事柄」に目を向けた会話です。
事柄というのは、5W2Hのようなことです。
When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どうやって)、How much(いくらで)
このような具体的な情報を知ることで、話がわかりやすくなるし、会話もスムーズに進みます。
事柄に注目するのは、とても自然なことです。
でも、もしあなたが「傾聴」を意識してみたいなら、ちょっと別の視点を持つことをおすすめします。
事柄を聴くのも大事だけど、「その人が、なぜ今その話をしたくなったのか」という、気持ちに目を向けてみるんですね。
Aさんの「迷い」にそっと心を寄せてみる
たとえば、あなたの友達や家族、職場の仲間――誰でもいいんですが、Aさんがこんなことを言ってきたとします。
「会社を辞めようか迷っていて…」
このとき、事柄にだけ注目すると、どんなふうに思うでしょう?
「辞めた方がいいかもね」とか「もう少し様子を見てみたら?」とアドバイスしたくなるかもしれません。
それはそれで親切心からくる自然な反応だし、間違ってはいません。
でも、ちょっと立ち止まってみてください。
Aさんが「迷っている」と言った気持ちに目を向けてみると、別の景色が見えてくるんです。
Aさんは、簡単に「辞める」「辞めない」と決められない何かがあるから、迷っているんですよね。
もしかしたら、今の仕事に不満があるのかもしれない。
新しいことに挑戦したい気持ちがあるのかもしれない。
でも、同時に、生活への不安や、周りの人の期待も感じているのかもしれない。
Aさん自身も、どうすればいいか、はっきりした答えが見つけられていないんです。
そんな複雑な気持ちを抱えているから、「迷っている」という言葉が出てきたんじゃないでしょうか。
そう考えると、同じ言葉でも、なんだか違って聴こえてきますよね。
答えを探さなくていい。それが傾聴のはじまり
ここで大事なのは、Aさんがその事柄について「どんな気持ちでいるのか」「何を感じているのか」に心を寄せてみること。
正しい答えを探さなくても大丈夫。
「なんとかしてあげなきゃ」と思わなくても、大丈夫。
ただ、「そうなんだ」「迷ってるんだね」と、Aさんの今の気持ちを受けとめること。
それが、傾聴のはじまりなんです。
たとえば、暗くて先が見えない道を進むときって、ちょっと不安ですよね。
そんなとき、誰かが「そっか、不安なんだね」と気持ちをわかってくれるだけで、心が軽くなったり、自分の足で一歩踏み出す力が湧いてくることがありますよね。
傾聴には、そんなふうに相手の心をそっと支える力があります。
もちろん、相手の気持ちを100%理解することなんて、誰にもできません。
でも、少しでも「こんな気持ちなのかな」と心に耳を傾けようとすれば、それで十分なんです。
あなたのペースでやってみよう
傾聴って聞くと、「ちゃんとやらなきゃ」とか「間違えたらどうしよう」って、少し緊張しちゃうかもしれません。
でも、あなたが「この人はどんな気持ちなのかな?」「何を大切に思っているのかな?」と、温かい関心を寄せるだけで、それはもう傾聴の第一歩なんですね。
最初は、「事柄」ばっかり気になっちゃうかもしれない。
「うわ、アドバイスしちゃった!」って思う瞬間もあるかもしれない。
それでいいんです。焦らず、ゆっくりやってみてください。
誰かの話を聴くとき、「この人、どんな気持ちでこれを話してるのかな?」と一瞬立ち止まって考える。
それだけで、きっと、これまでとは違う、温かいコミュニケーションが広がっていくはずです。
あなたの「傾聴したい」という気持ち、応援していますね。