あなたは、人の話を聴いているときにいろいろ言いたくなったり、あるいは、言ってしまった、という経験はありませんか?
たとえば、職場の部下が「後輩との関係で悩んでいる」と打ち明けてきたとします。
「先輩というものは、よい手本であるべきと思っているのに、うまくできない」と話しているのを聞くと、「そんなに頑張らなくてもいいのになぁ」「自然体でいいのに」 と思うこともあるでしょう。
そんなとき、ついアドバイスをしたくなったり、「こう考えたら楽になるよ」と伝えたくなることがありますよね。
でも、ちょっと立ち止まってみてください。
どうして私たちはアドバイスをしたくなるのでしょうか?
それは本当に「相手のため」?
相手の話を聴いていると、つい「こう考えればもっと楽になるのに」「気づいたほうがいいのにな」と思うことがあります。
でも、その気持ちの背景には、自分自身の経験や価値観が影響していることが多いのです。
たとえば、過去に自分が何かに気づいて楽になった経験があると、「この人にも同じように気づいてほしい」と強く思ってしまうことがあります。
「気づくことは良いことだ」
「変わることは大切だ」
こうした考えが、自分の心の中で自然に働いていることに気づくことが大事なんですね。
たとえば、あなたが以前、完璧主義に縛られて生きづらさを感じていたとします。
でもあるとき、「完璧じゃなくても大丈夫」と思えるようになり、とても気が楽になった。
その経験があると、目の前で「もっと頑張らなきゃ」と苦しんでいる人に対して、「そんなに頑張らなくてもいいんだよ」と伝えたくなるかもしれません。
もちろん、相手に幸せになってほしい、楽になってほしいという気持ちはとても素敵なことです。
でも、それが無意識のうちに「気づかせてあげたい」「変わったらいいのに」という押しつけになってしまうこともあるのです。
まずは自分の心に関心を向ける
では、どうすれば相手の話を先入観なく聴くことができるのでしょうか?
そのために必要なのは、「どれだけ相手を理解しようとするか」だけでなく、「どれだけ自分自身を理解しているか」です。
自分の心がどんなふうに動くのか、どんな価値観、どんな信念を持っているのかに気づいていること。
たとえば、誰かが「仕事がうまくいかなくて、もう辞めたい」と話したとき、
「辞めるなんて甘えだ」と感じるのか
「辛いなら無理せず辞めたほうがいい」と思うのか
その反応は、あなたがどんな「心のフィルター」を通して、物事や世界を見ているかによって変わってきます。
心のフィルターとは、私たちが物事を認識する際に、無意識にかけている色眼鏡のようなもの。
人は誰でも、過去の経験や価値観に基づいて、物事を解釈しています。
それがいけないということではありませんが、そのフィルターの存在に気づかないと、相手の話を正しく理解することができません。
話を聴いている時に、過去の経験から何かを感じたとしても、「あ、これは私の心のフィルターが反応しているんだな」と気づけると、相手の話をそのまま受け止めることができます。
そして、自分の感情と相手の話を切り離して、穏やかな気持ちで聴くことができるようになるのです。
もちろん、自分の経験が全く役に立たないというわけではありません。
過去の経験は、相手の気持ちを理解するためのヒントになることもあります。
でも、その経験で自分が感じたことが、相手にも当てはまるとは限らないんですよね。
自分の経験から判断するのではなく、あくまでも「あなたにとってどうか」という、相手視点で理解しようとすることが大切です。
自分の心を理解するためのステップ
では、どうすればこの「自分自身のフィルター」に気づき、相手の話をよりクリアに聴くことができるのでしょうか。
まずは、自分自身の心の動きを意識することから始めましょう。
1.自分に問いかける
何か出来事を見たり聞いたりしたとき、あるいは誰かの話を聴いている最中に、ふと「なんで自分はこう感じるのかな?」と気づいたら、一呼吸おいて、その思いや感情の出どころはどこだろう?と自分に問いかけます。
2.静かな時間を作る
忙しい日常の中でも、ほんのわずかな時間を使って、自分の心に向き合うことは、とても大切です。
たとえば、夜寝る前に、今日の自分の感情に少しだけ目を向けてみたり、静かな朝のひとときに、心の中のモヤモヤを書き留めてみるのも良いでしょう。
こうした小さな習慣が、いつしか自分自身をしっかり理解する手助けとなります。
自分を知ることが、相手を大切にすることにつながる
「相手を理解したい」と思うことはとても素晴らしいことです。
でも、それと同じくらい「自分のことを知ること」も大切。
自分がどんな価値観を持っていて、どんなときに心が動くのか、または動かないのかを理解していると、相手の話をもっとリラックスして聴けるようになります。
そして、相手がどんな考えを持っていたとしても、それを「変えなきゃ」と思うのではなく、「この人はこういう考えを大切にしているんだな」と、そのまま受けとめることができるようになるのです。
傾聴とは、ただ話を聴くことではなく、「自分の心の動きを感じながら、相手の話に耳を傾けること」。
そうすることで、より温かく、深く相手を理解できるようになるのではないでしょうか。
まずは、自分を知ること。
それが、本当に相手を大切にする聴き方に つながるのかもしれませんね。