最近は、「傾聴」という言葉が世の中に浸透してきているな、という印象があります。
「傾聴が大事だよ」
「人の話を“聴く力”が信頼関係をつくるよ」
そんな言葉を聞いて、傾聴の勉強を始めた方も多いのではないでしょうか。
実際、カウンセリングやコーチング、子育て、職場の人間関係など、あらゆる場面で「聴く力」は大切にされています。
でも、こんなふうに感じたことはありませんか?
- 「ちゃんと聴かなきゃ」と思えば思うほど、うまく聴けている気がしない…
- あいづちやくり返しなど、“技法”を使うことで頭がいっぱいになってしまう…
- 会話の途中で、「これ、正しい傾聴になってるかな?」と自分のことばかり気になってしまう…
そんなとき、傾聴がぎこちなく感じられたり、相手との距離が縮まらないまま終わってしまったり。
うまくいかない自分にがっかりして、疲れてしまうこともあるかもしれません。
技法を学ぶことは大切。でも、それだけではうまくいかない理由
傾聴は、一般的には「技法」と言われるスキルがあります。
- あいづちを打つ
- 相手の言葉をそのままくり返す
- 自分が理解したことを伝える
これらは、相手に「ちゃんと聴いてるよ」と伝えるための有効なツールです。
傾聴を初めて学ぶときは、こうした技法をひとつひとつ意識して練習することも大切です。
でも、「ちゃんとやらなきゃ!」と思うあまり、頭の中が“これで合ってるかな”の確認で
いっぱいになってしまうことがあります。
たとえば、「どこでくり返そうかな」「何か言ってあげたほうがいいのかな?」なんて考えながら聴いていると、どこかぎこちなくなってしまう。
相手の話を心から受け止めるどころか、「私の聴き方、これで合ってるかな?」と自分自身をチェックするのに精一杯になってしまうんです。私も経験があります。
そんなとき、なんだか疲れてしまうこと、ありませんか?
それは、頭の中が「正しく聴かなきゃ」というプレッシャーで忙しくなり、自分を常に評価してしまうからかもしれません。
大切なのは、わかろうとする気持ち
では、どうしたらもっと自然に、温かく、心を込めて話を聴けるようになるのでしょうか?
そのヒントはとてもシンプルです。それは、
「上手に聴こう」から「相手をわかりたい」にシフトすること。
相手が話しているときに、「この人は何を言いたいんだろう?」と素直な気持ちで耳を傾けてみます。
「どんな思いをわかってほしいのかな?」「今、何がつらいんだろう?」と、そっと心を寄せてみる。
うまく言葉を返せなくても大丈夫。
完璧に技法が使えなくても大丈夫。
まずは、相手をわかろうとする気持ちを持ちながら聴いてみること。
それだけで、言葉の選び方や態度、雰囲気が自然とやわらかくなっていきます。
もちろん、気持ちさえあればどんな聴き方でもいい、ということではありません。
傾聴の基本はしっかりおさえつつ、聴くときの視点を変えることで、自然に聴けるようになっていきます。
「うまく聴こう」はちょっと置いておく
傾聴が難しく感じるとき、自分を責めてしまう方も少なくありません。
「私、傾聴に向いてないのかも」
「こんなに頑張ってるのに、なぜうまくできないんだろう」と。
でも、そう思ってしまう背景には、「ちゃんとやらなきゃ」という真面目さと、「人を大事にしたい」という優しさがあります。
それは、とても大切な思いです。
だからこそ、「うまく聴こう」はちょっと横に置いといて、
「この人のことをもっとわかりたいな」
そんな気持ちに立ち返ることが、あなた自身をラクにしてくれるかもしれません。
あたたかな気持ちで、そっと耳を傾ける
傾聴は、“テクニック”よりも“まなざし”が大事です。
相手を大切に思う気持ちや、わかろうとする姿勢が、いちばんの土台になります。
話を聴くというのは、相手の心のそばに一緒にいようとする行為です。
それは、言葉以上のあたたかさを伝える力を持っています。
だから、あなたの「ちゃんと聴きたい」という気持ちは、きっと誰かの心をやさしく包んでいるはずです。
「うまく聴く」よりも、「心を込めて聴く」。
その小さな姿勢の変化が、あなたと誰かの間に、あたたかなつながりを育ててくれます。
まずは、一番身近な人の話を聞くときに、一度『この人は何を伝えたいんだろう?』と、ほんの少しだけ心を寄せてみませんか?